幼少期、父の仕事の都合により引っ越しの多かった私は、生活環境の変動の中で自分の居場所が安定せず、自己の存在の不確かさを常に感じていました。その感覚のためか、自分が「今ここに居る」という実感を体感したいという欲求から作品を作り始めるようになりました。

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谷山恭子の作品の多くは、場所の歴史や特徴からインスピレーションを得て作られています。色々な場所でのリサーチベースのサイトスペシフィックなインスタレーション、アートプロジェクト、パブリックアートは、その地域のローカルアイデンティティーの再認識を促すものであると同時に、作品を通じて出来上がる彼女と周囲との関係性によって、彼女自身が自己の存在感を再認識する方法にもなっています。

2011年3月11日の東日本大震災は彼女の作品に大きな影響を及ぼしました。震災直後、津波で住所も日常も全てが失われてしまった街の清掃ボランティアに参加した彼女は、今まで体験したことのない殺伐とした景観を前に「今、私はどこにいるのだろう?」という疑問を改めて持ちます。それを契機に彼女は更に場所との関わり方について考えるようになり、作品に緯度経度の座標を使うようになりました。「居場所(空間)」と「存在(時間・記憶)」という言葉が組み合わさってできている日本語の「所在」(= Ubiety) という言葉を軸に作品を展開しています。

※「Ubiety」の語源は17世紀中期に使われていたラテン語の”Ubi”=”where?”にetyがプラスされた言葉であり、ある場所に存在する質や状態を表現する(参照:means quality or state of being in a place : ある辞書より)、日本語の「所在」に近い意味を持ちます。現在欧州では日常ほとんど使われる事がない非常に認知度の低い言葉です。

 

近年の主な展覧会に、「なぜその風景がおもしろいのか」府中市美術館 公開制作68 2016、「Tea Talksお茶と祖国」Bradwolff Projects × ZBK Zuidoostアムステルダム オランダ2016、「街のはなし」ソーシャリー・エンゲイジド・アート2014~、「雨の路地」「I’m here ここにいるよ」瀬戸内国際芸術祭2010/2013その他美術館ギャラリーでの展示、日本各所にパブリックアートも設置しています。

2012-13 アジアン・カルチュラル・カウンシル フェローシップ

文化庁平成29年度新進芸術家海外研修員としてベルリンにて研修